| Story |
| 「う、うわぁ!やめろっイクシーーー!!」 とある辺境の村。そう叫んだ男の首筋を、真空の刃が切り裂いた。 目を見開いたまま、男は息絶えた。その数メートル離れた場所には、1人の少年が立っている。 黒い、フード付きの長いコートのようなものを着ている。旅人が愛用する服だ。 男を殺めたのはこの少年だ。…まだ顔立ちが幼い。 どうやら、この少年は尋常ではない力の持ち主らしいが…。 「これでこの村は終わった…それでもまだ…足りないのか…っ」 そう小さく呟いた少年は、血で赤く染まった村を少しの間じっと見つめた後、静かにその村を出た。 少年の名はイクシュヴァーク。村の人々からは、イクシという愛称で呼ばれ、愛されていた。 しかし、ある日を境にイクシの運命の歯車は狂い始めた…。 イクシはこの日、人間のものとは思えない力で人々を殺め、たった一日で村は死んだ。 「俺は…何処へ行けば良いんだ…俺は…」 フラフラと歩き続けるイクシの目の前に、ちいさな村が現れた。 先ほどの村が滅びる前と似たような、のんびりとした感じの村だ。 「見つけた…」 イクシは、そのちいさな村へと向かっていった。自分の生まれた村と同じ悲劇を繰り返そうと…。 「待て!止まれ!」 村に足を踏み入れようとしたイクシを、突然呼び止める声がした。 「……?」 イクシはゆっくりと声のした方を振り向いた。 振り返った目線の先には、イクシとあまり年の変わらないくらいの少年が立っていた。 「…なんだ?何か用か?」 うっとうしそうにそう言うイクシを、少年はにらみつけた。 「…お前、普通の人間じゃねぇだろ」 「!?」 イクシは一瞬ぎくっとしたが、冷静を保つ。普通の人間に負けるわけでもないのに、やはりイクシも中身は人間に変わりないのだ。 そんなイクシを見て、実に勘のいい少年だ。何かあると確信したらしい。 「やっぱりな。こんな田舎の村で育ったもんだから、鼻だけは利くんだよ。………なにもんだ、お前…!?」 少年は、さっと腰の短剣に手をかけた。 「……」 イクシは無言のまま、動こうとしない。 フードで顔の半分が覆われているため、表情すら分からない。 「……まぁいいや、家でゆーっくり話を聞かせてもらうよ」 そう言うと、少年はイクシの肩をがしっと捕まえた。その行為にイクシは少しムカッと来たようだ。 「…離せ。逃げやしないよ…」 少年の手を振り払うと、イクシはさっさと村の中へと入っていった。 「お、おい!ちょっと待てよ!」 慌ててイクシの後を追い、少年も村の中へと入っていった。 村に入ってからは少年が誘導し、自分の家へとイクシを引っ張り込んだ。 「そこに座れ」 「……」 イクシは無言で、言われたとおり椅子に腰掛けた。少年も、テーブルを挟んで向かい合うように椅子に腰をおろす。 「さてと、まずは…名前だな。お前、名前なんてーんだ?」 「………イクシュヴァーク」 イクシは、少年と目を合わせようとはしない。実を言うと、少年はまだイクシの瞳を見てはいない。 「…なげぇな…イクシで良いな。俺はアルフレッド。アルフって呼んでくれ」 「……」 アルフと名乗った少年は、まだ質問を続けるようだ。 「年は?ちなみに俺は17」 「何でそんな事聞く必要がある?お前は警官か何かなのか?違うならやめてくれ」 イクシは少し…いや、相当性格がひねくれているらしい。 アルフは警官でもない、ただの村人に過ぎない…が、正義感が強いからこういう事までやってしまっているのだ。 「お前…性格悪いだろ?」 「お互い様だ」 「テメェ…!」 アルフは思わず、がたっと椅子を倒して立ち上がった。イクシはやはり無言だ。 |